PICを使った電子回路製作に必要なもの

PICは、Z80など従来のマイコンボードと異なり、その小さな内部にプログラムを書き込むためのROM領域を持っており、これ単体で”プログラマブル”なので、ユーザがプログラムを作成して、これをこのICに書き込むことができるのだが、そのためには、機材(ハードウェアとソフトウェア)を用意する必要がある。

具体的には、

1)「開発端末」・・・ソースコードを書き、Hexバイナリを生成(コンパイル)するために必要な端末。主にWindowsパソコン(一応、MACやLinuxも可能であるが、トラブル発生時や開発手順のノウハウといった情報量が少ない。)。パソコンで「ソースコードを書いてコンパイルする」には最低限、テキストエディタとコンパイラ(C言語コンパイラもしくはアセンブラ)をインストールすればいいのだが、ソースコードが複数のファイルになるような大規模なプログラミングとなった場合は、これらだと操作や管理が大変になってくるので、さらにIDE(統合開発環境)といわれるソフトウェアもインストールしてPIC開発に使用することで、開発効率が良くなる(これらソフトウェアの詳細については、後述の4)項以降を参照)。

2)「プログラマ」・・・PIC-ICにプログラムを書き込む装置のこと。具体的には、Microchip社のPICkit2や3などで、秋月電商などで入手可能な8千円程度のUSBデバイス。

3)「PIC-ICアダプタ」・・・必須ではないが、あると便利なもの(特に複製したり、試作として複数の内容の異なるPIC-ICを用意しておきたい場合など)。
これは、 PIC-IC の形状は、8ピン~40ピン(これ以上も)でDIP型からSOPやQFP型などのパッケージのものがあり、これらの形状に応じてプログラム書き込みに必要な各PIN接続とプログラマをつなぐ回路基板。
汎用的なものはZIFアダプタを持ち、そこにPIC-ICを着脱させることができるものがある。(秋月電商にて、2,000円程度)

しかし、上述の 「PIC-ICアダプタ」 は必須ではなく、この代わりに、直接自作のPIC回路に書き込み用の外部接続PINを用意して、基板上の実装したPIC-ICとプログラマをつなげるようにすることが多い。(こうしたほうが、プログラムの試作&改修→コンパイル→書き込み→デバッグ→ プログラムの試作&改修 ・・・の開発サイクルがシームレスに行うことができ、ICの抜き差しなどの手間(ICの足を折ってしまうなどのリスク)を避けられる。

以下、開発端末にインストールしておくべきソフトウェアとして、

4)プログラム開発環境(IDE)・・・プログラムをコーディングから、コンパイル、デバッグ、PICへの書き込みなどが実施できる、プログラム開発に便利な機能を持ったソフトウェア。本サイトで使用する「MPLAB X IDE」がこれに当たる。
ただし、(厳密には)これ自体にはC言語コンパイラは含まれておらず、別途用意する必要がある。(アセンブラのみ標準実装)
また、PICへの書き込みも、これに対応したプログラマを用意する必要がある。

5)コンパイラ・・・PICマイコンにおける開発言語は、アセンブラ以外にはC言語しか選択肢はない。しかし、C言語コンパイラプログラムもいくつかのメーカ製品パッケージがある。機能制限ありの無償版があるのでこれを利用する。
この”機能制限”で利用できない機能とは、最適化コンパイルなど製品としてシビアな要件がない限り必要ない(というか、ここでは趣味レベルなのでほぼ不要)ので、これを利用することとする。

以上の通り、これだけの開発環境を用意するということになると、古くからマイコン開発経験がある人であれば、あたりまえのものばかりだが、これからという初心者においては、これらを認識して用意するのは、(なにかしら参考書を読んでないと)困難である。

この点では、Aruduinoやmbedのように、豊富な種類のマイコンボードとの接続と、豊富なセンサーやアクチュエータドライブ回路などのシールドに応じたサンプルコードがあらかじめ用意(随時情報更新)されていていたりと、開発環境プログラムをインストールしてマイコンボードとパソコンを接続してすぐに開発できるというように気軽に始めるというようにはいかない。(ただし、上述の必要機材は、従来のマイコン開発環境と比較すると、かなり簡略化されコンパクトかつ低コストになっている。)

これらの購入や入手に不安な場合は、まず最初に参考書籍を購入し、そこで使用されているものをとりあえずそろえてPIC開発を学んだほうが確実かも。ただし、入門書的な書籍は執筆時期が古いものが多いので、そこから学んだ後にステップアップして新しい型番のPICを利用するときに、環境を変える必要が出てくるので注意。(とくにCコンパイラが変わると、今まで書き込んだソースコードがそのままではつかえない!)

今の時点(2021~22年)で安牌なのは、PICが”マイクロチップ・テクノロジー社 (Microchip Technology Inc.) ”の製品であるから、ライターも「PICKit2または3」、IDEも「MPLAB X IDE」、C言語コンパラも「MPLAB XC8/16/32」と、やはり上から下まで同一メーカ製品でそろえた構成だと思われる。

補足)しかし、上述の短所も現在(2021年)では、「MPLAB Xpress」というオンラインIDEサービス(すでに2016年頃にローンチ?)の登場によってある程度解消(IDEやコンパイラのところが置き換わることになった)され、これらのようにWebブラウザでプログラミング開発ができてしまうようになった。(ただし、書き込みには当然”プログラマ”が必要となる。)

※この品名と入手先は、https://akizukidenshi.com/catalog/g/gK-05355/

以上、これらの導入方法や使い方については、それぞれの記事に記載する。