本章では、一般的なC言語でのPICプログラムを一から作成する手順を記します。
1. 新規プロジェクトの作成
初学者などいままでIDEというソフトウェアを使った経験がない方だと、「プロジェクト」というたいそうな言葉が表示されると、それほど会社的な大規模なプログラム開発をこれから行うつもりではないので、戸惑ってしまいがちだが、IDEではそんなプログラムの規模とか場所といったものとは関係なく、単にこれからプログラムを作成(開発)していくうえで生じる設定ファイルなどの様々なファイル(ほとんどがユーザのIDE操作によって自動生成される)を格納するフォルダの名前ととらえればよい。
よって、すべてのプログラム作成の第一歩としてこれから作成するプログラムのプロジェクトを作成する。それには、MPLAB X IDEの画面の左上、「File」をクリックし、「New Project」をクリックする。

2. プロジェクトの種類の選択
「New Project」 が実行されるとプロジェクトの新規作成ウィザードが始まる。まず最初に、”Choose Project”画面が表示されるので、”Categories”ツリーリストでは「Microchip Embedded」を選択し、”Projects”リストボックスでは「Standalone Project」を選択したら「Next」をクリックする。

3. ターゲットPIC-ICの型番の選択
次に、下図の”Select Device”画面が表示される。PIC16F84A用のプログラムを作成する場合、”Family”欄に「Mid-Range 8-bit MCUs (PIC10/12/16/MCP)」を選択して、次の”Device”欄で「PIC16F84A」を探し出して選択する。
”Tool:”欄では、事前にIDEに認識させていたプログラマ(Pickit2/3など)があれば、それを選択し「Next」をクリックする。

補足)この段階で、プログラマがない場合は、”Tools:”欄の値を”Simulator”にする。これにより、実物のターゲットPICに対して、書き込みはできないが、コンパイルおよびデバッグは可能であり、最終的なプログラムのHEXバイナリファイルを「MPLAB IPE」といったライタープログラムを使って後で書き込むことは可能。
4. コンパイラの選択
下図の”Select Compiler”画面が表示されるので、事前にインストールしておいたターゲットPICに応じたコンパイラ( PIC16F84A であれば「XC8」)を”Compile Toolchains”リストから選択したのち、「Next」をクリックする。

5. プロジェクトの名前および保存場所の設定
下図に示す”Select Project Name and Folder”画面が表示されるので、”Project Name”欄にはユーザで決めたこれから作成するプログラムのプロジェクト名(日本語不可の任意の文字列)を入力し、”Project Location”欄にはプロジェクトフォルダを作成する場所として、開発端末内のドライブおよびディレクトリパスを指定する。そして”Set as main project”にチェックを入れ、”Encoding”欄は「Shift JIS(開発端末がWin10の場合、”UTF-8”)」を指定ののち、「Finish」をクリックする。

注)Encodingに指定する値は、開発端末のOSが扱う言語(ロケール)に合わせること。これがあっていないと、プログラム中のコメントに日本語を入力することはできるが、プログラムを再度開いたときに全て文字化けしてわからなくなってしまう。ただし、Encodingの設定は、プログラム作成後でも File > Project Properties から変更が可能である。
6. ソースファイルの作成
「Finish」をクリックしたら、XIDEのトップ画面に戻り、指定のフォルダに新しいプロジェクトが作成される。そうしたら次に、プログラムを記述するソースファイルを作成する。
MPLAB X IDEの画面の左上(メニューバー)、”New File”のアイコンをクリック、もしくは 「File」>「New…」>をクリックする。

「Choose File Type」画面が表示されるので、”Categories”欄では「C」を選択したのち、”File Types”欄で「C main File」を選択したうえで、「Next」をクリックする。

7. ファイルの名前、保存場所の設定
下図の”Name and Location”画面が表示されるので、”File Name”欄には「main」と入力、Extensionは「c」を選択、Folderは何も指定せずに、「Finish」をクリックする。

これで、プロジェクト内にソースファイルが作成された。
補足) MPLAB X IDEの画面で、 左上ペインの”プロジェクト”ツリーリスト内の「Source 欄において選択した「C main File」以外に、「C Source Files」ノードを右クリックして、表示されるショートカットメニューから「New…」を選択すると、さらに下図のようなファイル種類のメニューが表示されるので、この場合は、「C Main File…」か「main.c..」か「mainXC16.c….」のいずれかを選択ののち、 File Nameには「main」と入力、Extensionは「c」を選択、Folderは何も指定せずに、「Finish」をクリックする。

7. ソースファイル「main.c」の編集
MPLAB X IDEの左側「Projects」欄にある「main.c」をダブルクリックすると、その右側にmain.cの内容が表示される。このmain.cの内容に、これからプログラムを記述していく。

/* * File: main.c * Author: xxxx * * Created on 2022/06/19, 23:44 */ #include <stdio.h> #include <stdlib.h> /* * */ int main(int argc, char** argv) { return (EXIT_SUCCESS); }
8. Configuration Bitsの設定
PICマイコンのプログラムでは、コンフィグレーションビット(PICの動作設定)をきちんと記述しないといけない。これが、PIC初心者のつまずくポイントである。MPLAB X IDEの旧バージョンであるMPLAB IDEでは、Configuration BitsはターゲットPICのデータシートを参考に、書き方を自分で調べて手動で入力しなければならなかったが、現在のMPLAB X IDEでは、マウスのクリック操作だけでConfiguration Bitsを設定できる便利な機能が追加されている。(素晴らしい!)
その方法は、まずメニューバーの「Production」>「Set Configuration Bits」をクリックする。
すると、MPLAB X IDEの画面の下部に”Configuration Bits”欄が下図のように表示される。各設定の意味の説明はここでは割愛するが、ターゲットPICが実装される電子回路の構成やプログラムの動作目的に合わせて、各パラメータの値を変更(”Setting”の値を変更)する。

設定が完了したら、(上図中の)「Generate Source Code to Output」をクリックする。すると、「Output – Config Bits Source」が表示される。表示されたソースコードを全てコピーしたのち、ソースファイル(main.c)の冒頭に貼り付ける。

9. プログラムコードの記述
あとは具体的な処理内容をソースファイル(main.c)にC言語で記述していく。
参考)最近の新しいPICを使用する場合、X-IDEにMCC(MPLAB Code Configurator)というオプション機能を追加していたら、この機能を使うことで、ターゲットPIC-ICの各ポート(ピン)の設定を ”Configuration Bits” のように、自動生成してくれる機能もある。
コードを書き終えた後の、デバッグ操作については、別ページに記載しているのでそちらを参照のこと。
以上