トラ技8月号付録dsPICマイコンボードこと”MDSPIC2012”(下図)は、Microchip社のdsPIC30F2012(データシート)を搭載したマイコンボードです。入手方法は、CQ出版社の書籍「PICマイコン・スタートアップ」(2009年初版発行)の本末付録として同梱されています。(ボード単体の入手はマルツパーツ館(秋葉原)でできたようですが、今となっては販売終了となっています)

・すぐに開発が始められるようブートローダ機能※を搭載(出荷時状態からROMに書き込み済み)しており、通常のPIC開発で必要なPickit2/3などのPICライターが不要。
・上述のブートローダ機能によって、パソコン(USB-シリアル変換ケーブル)とRS-232Cインターフェイスと接続するだけでプログラムをダウンロード(書き込み)可能。
・dsPIC30F2012(SOIC-28ピンパッケージ)の全ピンを引き出しているため、(ピンヘッダを半田付けすれば)40ピンDIP-ICのように使用できるコンパクトサイズ。
・USBコネクタからの給電も可能なので、別途電源を用意する必要がありません。(ただしUSBコネクタは別売。乾電池駆動も可能)
・PICライターを使用すれば,ROMの全メモリ領域に対してのプログラム書き込みも可能です。(これによりブートローダ自体の書き込みや、さらに自作自体も可能)
・CQ出版社のトランジスタ技術2007年8月付録基板と同一仕様とのこと。
※「PICにおけるブートローダ」機能とは、パソコンにおけるOSを起動させるための低次なプログラムのことではなく、PIC自身に開発者が実行させたいユーザプログラムを書き込ませ、その後この部分のプログラムだけをPICに実行させるために、あらかじめ記憶されたPICプログラムのこと。本来のプログラムを実行する前に実行されるという点から、パソコンのそれと役割は似ているのかもしれない。なお、ユーザプログラムの書き込みで、このブートローダプログラム自体が上書きされて消失するということはない。
なお、ベースボードと接続するためのピンヘッダー(20ピン×2個)は付属してないので自前で用意。
仕様 | トラ技8月号付録dsPICマイコンボード |
搭載デバイス: | Microchip社製dsPIC30F2012-30I/SO |
動作クロック: | 約30MHz(内蔵RCオシレータで動作) |
メモリ容量: | 12KバイトROM(うち1.5kバイトをブートローダで使用)、1KバイトRAM |
主な搭載機能: | ブートローダ機能、RS-232C簡易レベル変換、モード切替スイッチ、LED |
動作電圧: | 5V単一 (USB給電可能) |
サイズ: | 19mm×58mm(突起部含まず) |
一通り、書籍の内容を理解できたら、PICkit3などのPICライター(プログラマ)を購入し、ブートローダを潰して、通常のPIC開発ボードに転用(書籍に記載の箇所にジャンパーするなど)することで、dsPIC30F2012本来の機能をフルに使った本格的な電子回路開発にも使用できます。
とはいえ、今となっては、 dsPIC30F2012 自体がハイスペックで古いタイプのPICなので、これからPICを使い始めようという初学者には、PIC16F1 xxxシリーズを使うことをお勧めします。(低価格で機能が豊富であり、開発方法も便利になります)